Separating syntactic memory costs and syntactic integration costs during parsing: the processing of German WH-questions
Fiebach, C. J., Schlesewsky, M., & Friedericia, A. D.
Journal of Memory and Language, 2002, 47, 250-272.


格−曖昧性があるドイツ語の,WH−埋語(filler)とその空所(gap)との距離の長短をともなう主格/目的格WH(間接)疑問文について,被験者が処理する間の事象関連脳電位(ERPs)が測定された.埋語−空所の距離の長い目的語疑問構文において左前頭部における持続した陰性電位が観察されたが,距離の短い構文では観察されなかった.この陰性電位は作動記憶容量の個人差によって調整された.埋語−空所の距離に依存しないWHETHER−疑問構文では,対応する陰性電位は生じなかった.後続する名詞句の位置で,長短どちらのWH−疑問文でも陽性電位を生ずるERP効果が観察された.本研究では,持続する陰性電位については,記憶内で転移した(dislocated)目的語を保持するのに必要な作動記憶の処理を反映するものと解釈した.一時保持した事象と句構造表象の統合と結合した処理コストは,局所的な陽性電位によって示された.これらの結果は複雑な文の処理困難性を起因とした,統語的な作動記憶と統語的な統合コストとの分離可能な構成素という概念を支持した.