Syntactic parsing and working memory:The effects of syntactic complexity, reading span, and concurrent load
Vos, S. H., Gunter, T. C., Schriefers, H., & Friederici, A. D.
Language and Cognitive Processes, 2001, 16, 65-103.


ドイツ語の局所的な統語曖昧性を含む文処理における,言語性作動記憶(WM)容量の個人差(低 vs. 高スパン),および言語性WMへの同時負荷(低 vs. 高負荷)の潜在的な効果を研究するために,事象関連脳電位(ERPs)と行動指標(反応時間とエラー率)が利用された.実験文は,主格関係詞節(SR)と目的格関係詞節(OR)ともに,節の終末部にある助動詞によって曖昧性が解消された.SR文と比較したときのOR文の処理困難性は,オフラインの文理解におけるパフォーマンスの悪さが反映され,特に低スパン群に顕著だった.さらに,脱曖昧化する助動詞のERPs time-lockedから,高スパン群でSR節との比較からOR節の200-350msにおける後頭部の初期陽性電位(early posterior positivity)が認められた.これに対して低スパン群では,前頭部の後期陽性電位(late frontal positivity)が観察された.高スパン群における初期陽性電位は同時負荷と独立だが,後期陽性電位は同時負荷に応じて変動し,高負荷条件下では遅延した.これらの結果から,言語理解における統語処理は統語解析方略の個人差に関連することが示唆された.