Working memory constraints on syntactic ambiguity resolution as revealed by electrical brain responses
Friederici, A. D., Steinhauer, K., Mecklinger, A., & Meyer, M.
Biological Psychology, 1998, 47, 193-221.


文記憶容量の異なる読み手について,局所的曖昧文の統語解析方略をERPsを利用して検討した.記憶スパン高群とスパン低群のどちらも,文末単語までは曖昧であるか(後期−脱曖昧化:late disambiguation),または関係詞節で最初に出現する代名詞(即時−脱曖昧化:immediate disambiguation)か後続する名詞(早期−脱曖昧化:early disambiguation)の格付与によって曖昧化の解消する主格/目的格関係詞文を読むことが要求された.読文中に以下の効果がERPsにより記録された:後期−脱曖昧化条件では,主格関係詞文よりも目的格関係詞文で,脱曖昧化するための数付与のある助動詞における陽性電位が高スパン群でより多く現れ,低スパン群ではそれはなかった.この陽性波は,初期構造(選択)で主格関係詞節にすれば脱曖昧領域で必要となる(構造選択の)修正を反映したものと捉えられる.格付与が関係代名詞の節初頭部で利用可能なとき,高・低スパン群どちらも目的格関係詞文の脱曖昧領域での陽性波が示された.格付与が曖昧な代名詞に後続する名詞句で利用可能なとき,どちらのスパン群も脱曖昧領域での修正の効果は明確でなかったが,文終末部における数付与のある助動詞でのみ効果が認められた.この格付与情報の非−即時利用は,ドイツ語の格付与機能における言語固有の曖昧性によるもので,脱曖昧領域の文中位置と相互に作用する.データを総合すると,与えられた情報が明らかに曖昧でないならば,文処理中の統語的曖昧性を解消するのに,高・低スパン群どちらも形態情報が即時に利用可能なことが示唆された.さらにこれらのデータは,高・低スパン群間で生じうる曖昧性解消の処理における差異が,曖昧領域が長期のときにのみ現れることを示唆した.