Individual differences in sentence memory

Roberts, R., & Gibson, E.
Journal of Psycholinguistic Research, 2002, 31, 573-598.


本稿では2パートからなる実験の結果を提示した.パート1では,被験者は2−5節から構成される文を聴き取り,文意についての質問に回答した.パート1の結果は,文の記憶表象における重要な単位は節であり,ほかの談話構造による構成素ではないことが例示された.パート2では,同一の被験者グループによって8種類の短期/作動記憶スパン課題が実施された.それぞれの被験者の複合スパン得点が,Daneman & Carpenter(1980)を基準とした3種類の作動記憶スパン課題に基づいて算出された.この作動記憶の測定はパート1で測定された被験者の文記憶課題の遂行と有意な相関が得られた.他の作動記憶の測定−N-back−もまた被験者の文記憶課題の遂行と有意な相関があり,彼らの複合スパン課題とN-back課題の遂行には相関が認められなかった.そこから以下の結論が導かれた:(鄯)作動記憶は複数の分離した構成素から成り立っている;(鄱)文の記憶はこれら複数の構成素をひとつ以上活用している.さらに,文記憶と(どちらも言語処理課題ではない)複合スパンおよびN-back課題との相関は,文の記憶が単なる言語体験の結果によるものではない;むしろ,独立した作動記憶の構成要素が被験者の文記憶課題の遂行に貢献していたことを示唆した.