メッセンジャーで学校の後輩と話をしているときに,何故か分からないけれど急に思い出したこと。



実家に戻ったときに高校の友人とその奥さんとその元同僚らと一緒に飲み会になった。私は完全にゲスト扱いで,どんな規模の飲み会なのか全く知らされてなかったのだけれど,参加してみたらあらビックリ100人以上!というもので。

地元で着実に年月を重ねている人々の中にぽつねんと独り佇んいると,いつもなら「やぁ私はまるで根無し草だ」という気持ちが沸々と沸いてくるところなのだけれど,その日は何故かいい心持に酔うことが出来た。眺めている風景がキラキラしたり(屋外で飲んでいたので,利根川とか浅間山がそこはかとなく綺麗だった),初めて会った隣りの人との会話が普通に弾んだりというのは,これは私にしてはとても珍しいことだった。

そんな流れの中,仲間内だけで居酒屋で2次会になった。午後の日の高い時間から飲み続けていたので,もういい加減飲むのにも疲れ,まぁ折角知り合ったのだから交友を深めましょう,という雰囲気だった。中にはあからさまに「こりゃ狙ってるなぁ…」という出会ったばかりなのにひどく親密な男女もいたけれど(パーソナルスペース狭すぎ),少なくとも私はそういう狙いで誰かと話したり麦酒を注いだりしてなかった。

でもある会話をしてから,相手の女性の対応がとても警戒心の強いものになった。こんな感じだったと思う。



「○○(一緒に飲んでた女の子)さんはどこかで見たことあるなぁって気になってたんだよね。で,さっき思い出したんだけれど,昔一緒だったゼミの後輩に雰囲気が似てるんだなって。」

「あはは,そういう風に女の子口説くんですか?」



確かに「『個人的な知り合い』に似てる」て言われていい気分がすることなんてほとんどないだろうし,そういう意味では言ってしまった私がアタマ悪かったのは事実で。でも,何の下心も無くてホントに既視感が漂ってて,誰だっけ誰だっけ…ああぁぁっ!という感動をただただ言いたくて,飲んでるときのくだらない会話のつもりで言ったことだったのに。



顔には出さなかった−と思う−けれど,酔いが一気に醒めたのを憶えている。会話のもつ記号がストレートなものでなくなる,というのを実感した。これが,余計な気負いなくすべての飲み会に参加していた『最後の日』になって,そして誰と飲むのか・どんな会話がタブーなのか・どれくらいの量を飲むのが適切なのか,といったことを考えるようになった『最初の日』になった。仕事に従事するようになって接待とかでお酒を飲むようになるときっと何か飲み方が変わるんじゃないかなぁでも知り合いや同世代の人と飲むときは昔も今も何も変わらないんだろうなぁ,と漠然と考えていた私にとっては,それは突然やってきたシフトだ。



ここ数年のことだけれど,新しく出会う人の容貌やしぐさ,語り口が以前から知っている誰かに似ていることが増えた。というより,自分の他者弁別能力が落ちてきたのかも知れない,まぁどっちだって同じだけれど。“あ,誰かに似てる”,そんなことを思いつくたびに,そして誤って似てることを伝えてしまうたびに,あの2次会での会話を思い出して,とても複雑な気分になる。




メッセの会話が終わって,なんで急にそんなこと思い出したのだろう…と,食べ終わった手抜きオムライスの皿をゴシュゴシュしながら考えた。

花見にはちょっと遅い時期に実家に帰省して,八重桜見ながら飲んでた去年のことだからだ,と気づいた。タマゴの買出しに出掛けたときの,道路脇の八重桜が検索手がかり。