Intersentential syntactic context effects on comprehension: the role of working memory
Sandra H. Vosa, S. H., & Friederici, A. D.
Cognitive Brain Research, 2003, 16, 111-122.

本実験では,統語的バイアスをかける文脈(文)が,統語的に複雑な目的語先行の関係詞節(object-first relative clauses)と,さらに複雑な目的語先行の補文(object-first complement clauses)の処理への影響について,読み手の作動記憶の個人差によって検討した.事象関連脳電位と共に行動指標が,作動記憶スパンの高低のどちらかによって分類された2つのグループの被験者について測定された.文処理後の理解課題から得られた行動指標からは,低スパン群の読み手には,目的語先行の関係詞節における文間の統語的文脈の影響が示されたが,高スパン群にはその影響が認められなかった.脱曖昧項目(の提示時間)におけるオンラインのERP測定からは,高スパン群では(統語)構造の主効果(主語先行 対 目的語先行),つまりP600成分が文脈とは独立に現れた.これに対し低スパン群ではP600の文構造の効果が示されなかった.そこからデータを総合すると,低・高スパン群の間で異なる文理解への文脈効果が示唆された.高スパンな読み手は,逐次入力される情報を文脈とは独立して統語解析する一方で,低スパンの読み手は文間の文脈情報をオフラインで利用している.

relative clause=関係詞節(※関係節でも可)
complement clause=補文(※“節”とかつかない)